研究シーズResearch Profiles
仏教と精神分析
プロフィール
仏教学部 宗学科 教授:三輪是法 Zeho Miwa
博士(文学)。2019年度に立正大学に着任しました。専門は仏教学と宗教学、その基盤は日蓮教学です。宗教を信仰する人間の心理に関心があり、令和5年度に文学研究科の出版助成をいただき、『近現代における日蓮信仰』という本を出版しました。趣味は料理で、フードロスを心がけています。
- 目的・内容
- 仏教の人間分析は精神分析の理論と接続可能か?
仏教を、葬送儀礼や伝統宗教のように社会的役割から見る人が多いと思いますが、実際は高度な人間分析理論の集大成で、私たちを苦しみから解放するための方法が考えられています。特に注目しているのは、煩悩を克服して涅槃に入る方法について、今風に言えば、欲望を原因とするこころの病を克服する方法についての理論です。ただし、人間の発生、こころの発生については輪廻転生や前世と現世とのつながり・因縁といったような、宗教思想によって答えられているため、こころの発生契機を精神分析の理論と接続させたいと考えています。
- 展望・成果
- 儀礼としての仏教から現代思想としての仏教へ
仏教と精神分析に関する共同研究は、1957年、メキシコで開かれた禅仏教と精神分析学の研究会議に始まったようですが、そのときの様子が、鈴木大拙とエリッヒ・フロム、リチャード・デ・マルティーノの『禅と精神分析』に収められています。以来、仏教と精神分析学、あるいは心理学との学際的研究は、現代においても続けられていますが、仏教学者が行っている研究はほとんど確認できません。さらに、仏教はユングやアドラーの心理学に取り上げられることは多いのですが、ラカン精神分析との融合・接続は初めての研究だと思います。
- 研究が生み出した成果・効果による社会への応用や実装の可能性など
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仏教は古くさいものではなく、現代思想に通じる哲学性、柔軟性を持ち合わせていると思っています。この研究によって、仏教と現代における精神分析理論が接続できれば、自分を見失っている現代の人々に対して、仏教がケアできると考えます。
- キーワード
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摩訶止観、一念三千、煩悩、精神分析、欲望、想像界、象徴界、現実界