研究シーズResearch Profiles
マインドフルネスによる怒り感情の予防
プロフィール
心理学部 臨床心理学科 特任講師:武部 匡也(Masaya TAKEBE)
臨床心理学分野の認知行動療法を活用して,摂食障害の予防研究やイップス・競技不安をはじめとしたアスリートの心理学的な支援なども研究テーマとして取り組んでいます。
所属学部ホームページ:https://www.ris.ac.jp/psy/
- 目的・内容
- マインドフルネス認知療法で怒り感情にとらわれ過ぎないように支援する
私が取り組んでいる研究では,怒り反すうをマインドフルネス認知療法という心理療法を用いて,怒り感情の頻度や強度が高まるリスクを低減させることに取り組んでいます。
怒り感情は日常的に体験される感情の一つですが,身体的な健康(例:心臓病)・精神的な健康(例:児童虐待やいじめといった攻撃行動)のリスクとなることが明らかにされています。そのようなリスクを増幅させる要因の一つが怒り反すうと呼ばれる,怒りの体験を繰り返し思い出してしまうことです。怒り反すうをする傾向が強い人は,将来的に怒りを感じる強度や頻度が高まる可能性が指摘されています。
マインドフルネス認知療法は,認知行動療法という心理療法の一種の中で確立された治療法で,禅や仏教の考え方から生まれています。マインドフルネス認知療法は,元々は再発が起きやすいうつ病の再発予防の治療法として開発されましたが,私の研究ではそれを怒り感情の予防に応用できるのではないかと問いを立てて研究を進めています。
- 展望・成果
- 怒り感情の予防から心疾患やいじめ,暴力の予防を実現したい
従来のマインドフルネス認知療法を怒り感情の予防のために改良したプログラムについて無作為化対照試験を実施した結果,怒り感情の予防ができる可能性を示唆することができました。また,治療の標的としていた怒り反すうの低減も確認することができたため,狙い通り,怒り反すうを低減させて怒り感情を予防することができました。
この先は,怒り感情による悪影響(心臓病や児童虐待,いじめなど)までプログラムの効果が波及するかを確認する必要があると考えています。現在の研究ではあくまで「怒り感情の予防が達成できた」という点までしか到達できておらず,その先にある身体的・精神的な健康に効果があるのか,不透明です。公認心理師が活躍する5領域 (医療・教育・福祉・司法・産業) それぞれで活用できるような研究を進めていきたいです。
- 研究が生み出した成果・効果による社会への応用や実装の可能性など
-
この先の応用が進めば,病院などの医療現場で提供される心臓病の予防策として心理士が怒り予防プログラムを実施することで,心理士の活躍する場を広げることも可能になるかもしれません。また,児童虐待やいじめといった攻撃行動の予防に貢献することがわかれば,学校現場での普及や児童相談所等の福祉施設での実装も可能となるかもしれません。
- キーワード
-
#心理学部,#怒り感情,#マインドフルネス,#怒り反すう,#攻撃行動