研究推進

個人のデータや資料に基づくパーソナリティ(性格、個性)の理解

下司忠大

プロフィール

心理学部 対人・社会心理学科 講師 下司 忠大 Tadahiro Shimotsukasa

早稲田大学大学院文学研究科心理学コース博士後期課程修了 博士(文学)
日本学術振興会特別研究員DC2、早稲田大学文学学術院助手・助教を経て2022年度より現職
「自分のことは自分が一番わかっている」と言いますが、そうでないことも多いです。どうすればパーソナリティを体系的に理解できるか、日々研究を進めています。

目的・内容
個々人のパーソナリティを体系的に理解する

ひとには様々なパーソナリティ(性格、個性)があり、それを捉えるために古くから様々な哲学者・心理学者が議論を深めてきました。近年では、大規模な集団に対して調査を実施し、分析するような「心の個人差」に着目した心理学研究が数多く蓄積されてきており、これまで私自身もそのような研究に従事してきました。しかし、これらの研究では集団全体の個人差を把握することはできても、一人ひとりの「パーソナリティ」を十分に捉えることはできません。パーソナリティを理解するためには、一人ひとりから緻密にデータを収集したり、歴史的に残された個人的資料(日記、手紙、自伝など)を活用したりするような研究が必要です。私の研究目的は古来より議論されてきたパーソナリティ理論を、このようなデータ、資料に適用して、パーソナリティ全体を理解することにあります。

展望・成果
個人の緻密なデータ、個人的資料からパーソナリティへ迫る

一人ひとりから豊かなデータを得るためには、反復測定(繰り返しのアンケート調査)が必要です。私自身のこれまでの研究ではおよそ100日間、同じ心理尺度に回答してもらい、そのデータを個人単位で分析したものがあります。その結果、個々人に特徴的な因子構造が見られ、集団単位の分析のみでは見出すことのできない個々人に特徴的なパーソナリティを示唆しました。
個人的資料を用いたパーソナリティ研究は発展途上の研究領域ながら、海外では心理伝記研究(psychobiography)として注目を集めています。日本においても様々な著名人が伝記等の個人的資料を公に残しており、これらは社会学や歴史学において使用されることがありますが、心理学的な研究は未だ少ないのが現状です。私は、これらの個人的資料をパーソナリティ研究に活用するという伝統的手法だけでなく、テキストマイニングや機械学習を用いた文字データの分析にも関心があり、この領域に新たな観点からアプローチできるのではないかと考えています。

研究が生み出した成果・効果による社会への応用や実装の可能性など

「自分のパーソナリティを理解する」ということ自体に社会的ニーズがあるように思いますが、そのようなニーズに適う研究であると思います。また、様々な不適応(犯罪・精神疾患等)の予防や理解につながる可能性もあります。

キーワード

#パーソナリティ、#心理学、#個性記述的研究、#個性定立的研究、#テキストマイニング、#時系列分析、#個人的資料、#心理伝記研究

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