研究シーズResearch Profiles
広告の繰り返し提示が消費者に与える影響の検討
プロフィール
心理学部 対人・社会心理学科 教授:八木 善彦 Yoshihiko Yagi
大学3年生のときに,Vicaryのサブリミナル広告の記事を読んで以来,広告が消費者に与える影響にずっと興味を持ってきました。残念ながらVicaryの実験はすでに捏造と認定されていますが,実際に自分で研究を行うようになった今でも,広告の研究は常に新しい発見がある魅力的なテーマだと感じています。
- 目的・内容
- 繰り返し広告に接することで何が起きるのか?
同じ広告に繰り返して接することで,消費者は広告の画像を好きになったり,広告の文章を真実だと信じるようになることがわかっています。商業広告を繰り返し流す理由の一つは,こうしたポジティブな影響にあります。私は,なぜ,広告の単純な繰り返しが,消費者の態度を変化させるのかという問題を認知心理学的に調べています。
- 展望・成果
- 広告の繰り返し提示の影響は,これまで考えられてきたよりも,もっと複雑
広告を繰り返し提示することで,消費者はその画像を好きになったり,内容を真実だと信じるようになることは,心理学では古くから指摘されていました。しかし,実験用の単純なものではなく,現実社会で実際に用いられている広告を刺激として実験を行ってみると,繰り返し提示の影響はこれまで考えられてきたよりも,ずっと複雑であることがわかってきました。例えば,「タレント+商品」という典型的な広告画像を繰り返し提示した後に,(a)広告画像全体,(b)タレント,(c)商品,のいずれかを提示して実験参加者の好意度を測定してみると,繰り返しによるポジティブな影響は,(a)広告画像全体または(b)タレントに対してのみ生じており,肝心の(c)商品について,そのような影響は全く認められませんでした(Fig.1)。別の研究者が行った研究では,こうした広告画像においては,むしろ(c)商品が嫌悪的に評価される場合があることさえわかっています。
- 研究が生み出した成果・効果による社会への応用や実装の可能性など
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こうした研究を続けていくことで,広告の繰り返し提示が消費者に与える影響をより詳細に理解できるようになると期待されます。また,その成果は,より効果的な広告の作成などに還元できるのではないでしょうか。
- キーワード
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# 心理学部,#消費者心理学,#認知心理学,#広告,#単純接触効果,#真実性効果
- 共同研究者
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立正大学心理学部 対人・社会心理学科 准教授:笠置遊 Yu Kasagi
東京都立大学 人文社会学部 准教授:井上和哉 Kazuya Inoue