研究推進

東南アジアの寺院建築にみられる浮彫の研究

久保真紀子

プロフィール

仏教学部 仏教学科 准教授:久保 真紀子 Makiko Kubo

上智大学大学院博士後期課程修了 博士(地域研究)
日本学術振興会特別研究員PDを経て、平成31年度より立正大学で勤務。
東南アジア美術史、特に、アンコール期のクメール寺院建築にみられる仏教説話やヒンドゥー教神話の浮彫を中心に研究しています。学生の頃から何度も調査に訪れたカンボジアは、私にとって第二の故郷のような存在です。

『ラーマーヤナ』の一場面を表す浮彫
目的・内容
浮彫の尊像配置から、建造者の宗教観や統治理念を読み解く

東南アジア大陸部に9~15世紀にかけて版図を築いたアンコール朝では、歴代の王たちがヒンドゥー教や仏教を信仰し、多くの寺院を建造しました。19世後半にフランス人がアンコール遺跡調査を開始して以降、それら寺院群で確認された碑文の記述内容や尊像彫刻の像容をもとに、建造時の政治的・宗教的背景の解明が進められてきました。私の研究では、特に寺院伽藍を構成する各施設に施された浮彫に焦点を当て、それらの主題や図像表現を整理し、寺院に祀られた尊像の配置構成がどのように変遷したのかを調査しています。それによって、寺院創建時の寺院伽藍に込められた建造者の宗教観や統治理念を明らかにすることを目指しています。

展望・成果
モノ資料と文字資料の比較を通して検証

アンコール朝のもと建立された寺院建築には、ヒンドゥー教の神話や叙事詩『ラーマーヤナ』や『マハーバーラタ』、釈迦の生涯をあらわす「仏伝」や前生物語である「本生譚」等を主題とした様々な浮彫が確認できます。それら浮彫は、寺院建造時の宗教観を反映する貴重な資料と言えます。このように、物語の場面を具体的に描写し造形化したモノ資料だけでなく、多くの遺跡では、創建時の王の系譜や事績等を記した文字資料として、石柱や出入口枠に刻まれた碑文も確認されています。私は、こうしたモノ資料と文献資料をそれぞれ比較検討し、双方から読み取れる内容の整合性を検証してきました。
これまで、アンコール朝の最大版図を築いたジャヤヴァルマン7世の統治期の寺院伽藍において、こうした調査研究を実施してきました。今後はその前後の時期にも視野を広げ、寺院建築を装飾する浮彫の主題や配置構成が時代を通してどのように変遷していったのか、その過程を辿りたいと考えています。

  • 『ラーマーヤナ』の一場面を表す浮彫

    『ラーマーヤナ』の一場面を表す浮彫

  • 「仏伝」の一場面を表す浮彫

    「仏伝」の一場面を表す浮彫

  • 出入口枠に刻まれた碑文

    出入口枠に刻まれた碑文

キーワード

#仏教学部、#東南アジア、#カンボジア、#アンコール朝、#美術史、#建築装飾、#浮彫、#尊像配置

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