研究シーズResearch Profiles
魔術の現象学
プロフィール
文学部 哲学科 教授:武内 大 Dai Takeuchi
文学博士(哲学)。専門は現象学と西洋オカルティズム。趣味は魔術書蒐集と芸術鑑賞。クラシック音楽、特に17世紀フランスの宮廷音楽が好きです。ポップスならクイーン初期。映画、造形芸術、文学は、主に幻想・怪奇・耽美系の作品を好みます。
魔術的体験の現象学
生きた体験としての魔術
- 目的
- 幻視体験の現象学的分析
空中飛行、変身、精霊(天使、悪魔、妖精)との遭遇といった魔術的現象は、単なる空想物語にとどまるものではなく、リアルに体験することができます。もっとも、これはあくまで「幻視(vision)」という様式での体験です。しかしそれは、ぼんやりとした単なる空想とは異なり、知覚と同程度に迫真性を備えた、生き生きとした体験なのです。この幻視体験の本質構造を「現象学」という方法論によって解明するのが、さしあたりの目的となります。
- 内容
- 幻視体験の事例研究
エリザベス朝最大の碩学と謳われたジョン・ディーの天使召喚、近代オカルティズムの父、エリファス・レヴィの儀式魔術を題材に、幻視体験のメカニズムやその哲学的意味について考察しております。ここ数年は、魔女裁判の犠牲となった、初期近代スコットランドにおける魔術実践者たちの「妖精」体験の分析に取り組んでおります。
- 展望・成果
- 哲学的な知と魔術的な知
哲学的な知というのは、長い伝統の中では、意識的な経験と論理的な推論を基調としておりました。しかし20世紀に入ってからは、無意識、想像力、身体的実践知といった領域に多くの関心が寄せられました。魔術的な知とは、簡潔に表現するなら、「身体的実践によってコントロールされた無意識の知」と言えましょう。創造的な学問知を形成するためには、これら二つの知を上手く協働させることが肝要であると私は考えております。
最近の主な研究成果
「 18・19世紀におけるネクロマンシーの理論と実践 : エリファス・レヴィとエッカルツハウゼン 」、『 立正大学文学部研究紀要 』第40号、2024年
「魔術とは何か : 自然主義的アプローチ」、『あらわれを哲学する : 存在から政治まで』、晃洋書房、2023年
「「妖精の宴」から「魔女のサバト」へ : 儀式と軟膏」、『立正大学人文科学研究所年報』第59号、立正大学人文科学研究所、2022年
「魔術的現象のリアリティ : 魔女容疑者の体験分析」、『フィルカル』 6-3、ミュー、2021年
「エリファス・レヴィにおけるタロット占いの意義」、『ユリイカ』 (総特集「タロットの世界」)、鏡リュウジ責任編集、青土社、2021年
「光と媒体 : 魔術的幻視の現象学」、『現象学 未来からの光芒 (新田義弘教授 追悼論文集) 』、河本英夫編、学芸みらい社、2021年
“Phenomenological Metaphysics of the World : Eugen Fink’s Meontic”, in Lebendigkeit der Phänomenologie / Vitality of Phenomenology, Giovanni Jan Giubilato (ed.), Traugott Bautz, 2019、
「ジョン・ディーにおける創造の問い」、『実存思想論集』 2(23)、理想社、2016年
- キーワード
-
#現象学、#形而上学、#エトムント・フッサール、#オイゲン・フィンク、#西洋オカルティズム(魔術・占星術・錬金術)、#ジョン・ディー、#エリファス・レヴィ、#エッカルツハウゼン、#魔女、#妖精、#吸血鬼、#変性意識状態、#幻覚、#夢、#明晰夢、#バーチャル・リアリティ
- 研究者からのメッセージ
-
役に立つかどうかよりも、意味があるかどうか。役に立つか否かは、あまり気にせず、自由に好きなことをひたすら追い続けていれば、自ずと道は開かれてくるのではないでしょうか。どんな環境でも、どんなに些細で馬鹿げたことからも何かを学び取ろうとする姿勢が大切だと思います。
- 共同研究者
-
東邦大学 名誉教授(心理学):渡辺 恒夫 Tsuneo Watanabe